天国と地獄
 

2023年7月18日更新

第225回 日本の危機について <その11>

私がかねてから主張しているように、
「800年周期説」ではこれから800年間は西洋が没落し、東洋が栄えます。
おそらく、将来的には中国かインドが覇権を握るでしょう。
いや、イスラム文明かもしれません。

ただし、“今”は文明の衰退と隆盛の交差点に位置しています。
こうした文明が交代するタイミングでは、歴史的にも多くの軋轢が生じており、
過去には戦争、動乱、災害、パンデミック(疫病)などが頻繁に観測されてきました。
現在もそのような状況下にありますが、これからも多くの大事件が起こることでしょう。

800年周期で衰退の途上にある西洋文明の最終ランナーは、アメリカです。
アメリカは今、ゆっくりと衰えつつあります。私が800年周期について書いた本、
『9.11と金融危機はなぜ起きたか!?』(上・下)を読んでいただければわかりますが、
最終ランナーとなる文明は、完全に没落する前に光り輝くことがほとんどです。
そのあと、急速に力を失って行くのですが、
今のアメリカはまさにその没落前に光り輝いている時期なのではないでしょうか。

この時期を過ぎると、アメリカは急激に衰えて行くはずです。
ただし、時期としては数十年以上先のことになると思います。
しかし、すでに衰退の兆候ははっきりと出ています。
アメリカは民主主義において世界のリーダーでしたが、ドナルド・トランプ氏の登場が示すように、
今までの民主主義とは違う形になってきています。

日本にとっても他人事ではありません。
というより、日本はアメリカ以上に際どいところに来ています。
今さら説明するまでもありませんが、財政破綻のタイミングがどんどん近づいてきているのです。

私の『40年周期説』からすると、日本の国力は逆オイル・ショックのあった1985年にピークを打ちました。
偶然にも、同じ時期に象徴的な出来事が起こっています。「プラザ合意」です。
ニューヨークのプラザホテルで、日米英仏独5ヵ国の蔵相と中央銀行総裁が極秘に集まり、
日本の巨大な貿易黒字を削減するため、協調為替介入を通じて円高誘導することで合意しました。
日本からは竹下蔵相が参加しています。
プラザ合意後の急速に進行した円高により、東京や大阪などでは倒産に追い込まれた町工場が続出しました。

日銀は“円高不況”に対応するため低金利政策を迫られ、
その結果、1986年3月から1989年まで低金利政策が続くことになります。
その間、日本はバブル景気を謳歌しました。
そして1989年の年末に株価は天井を付け、そこから暴落して行きます。
1990年のバブル崩壊から、今年で33年目です。
1世紀は100年ですから、3分の1世紀もの時間が過ぎました。

この間、日本は思考停止に陥っていたと言えます。
過去の栄光、まさに戦後の高度成長期からバブルの1990年までの良い記憶にすがり、
「適当にやっても何とかなるのではないか」と言わんばかりに無策のままで、
主な経済政策といえば金融緩和と財政出動を繰り返すばかりで
いつしかとんでもない額の政府債務が積み上がってしまいました。
これからは、本当に気を付けないといけません。永遠に先送りできる債務問題はないのです。

私は、財務省を含めて様々な金融のインテリジェンスに自ら出向いて現場を取材し、
多くの意見を聞いています。
彼らから出た言葉は、「もう、改革は無理」という絶望的なものでした。
第一に自民党、そして彼らに選挙を通じてお墨付きを与えている日本国民も
ばら撒きを求めていると言えます。
結果として、国家・国民の総論が「財政の改革を許さない、増税も許さない、とにかくばら撒け!」
の一点張りと化しています。

私も端的に、もう無理だと思います。
この国は先の太平洋戦争と同じように、最後は本当に完敗するでしょう。
このまま壁に激突(ハードランディング)するまで
借金を積み上げることに心血を注ぐことでしょう。
しかし、永遠に借金を積み上げることなど決して叶わず、
必ずやどこかでその“反動”は国家・国民に降りかかります。
その時、一体どうなってしまうのでしょうか?
私は今、3つのシナリオを考えています。

1番目は、コトが起きた際に政治家も国民もようやく気付き、
大きな混乱を避けるためにいろいろと手を打ちますが、時すでに遅し。
積み上がった借金があまりに大きく、経済力も落ちてきているため、
インフレを伴った失われた数十年を経験するというものです。
簡単に復興できない状態がダラダラと続く、という陰鬱なシナリオです。

2番目は、急進的な政治家が登場するというシナリオです。
戦前のドイツは、第一次大戦に負けたことにより
戦勝国から多額の戦争賠償金を請求されて国家破産し、ハイパーインフレを味わいます。
そうした混乱に乗じて、ヒトラーが台頭しました。
そして、またしてもヨーロッパ中で戦争を起こしたのです。
似たような例が、現代にもあります。ソ連です。
ソ連が崩壊して、ロシアでは国家破産の状態が10年間も続きました。
そしてプーチンという独裁者が台頭、2014年にクリミア半島を強奪するや、
2022年からはウクライナに侵略しています。
ここ日本ではそんな急進的な独裁者は生まれない、と思いたいところですが、
社会が混乱をきたすと突拍子もない人物に票が集まりやすくなるのは、歴史の常です。

3番目は、最も明るいシナリオです。
政治家と日本国民が一念発起し「大改革をしよう!」と団結して国家一新する、というものです。
当然、私は3番目のシナリオを望みますが、1番目や2番目になる危険性もあります。

繰り返しになりますが、800年周期説で言うとこれからは東洋の時代に入ります。
アジア諸国も少子化などの問題を抱えていますが、
中国やインドがこれからの世界を率いて行くことは確実でしょう。
しかし、短期的には中国が軍事力を行使するか否かが最大の焦点です。

仕方のないことですが、現在の世界は究極の分断に向かっています。
その最前線は、東アジアでもあるわけです。
韓国が中国のことを悩むように、日本にも多くの問題が降りかかっています。
同盟国であるアメリカとも、今後どう付き合って行くのか考えなければなりません。
今後も皆さんと「現代の危機」について、さらに考察して行きたいと思います。

 

この国の現状は、国を動かす官僚や第一線で働く人々をして
「もう、改革は無理」と言わしめている状況である。
日本国民が一念発起し「大改革をしよう!」と団結して国家一新するには、
私たち一人ひとりの意識改革から始めなければならないのかもしれない。
(2023年6月 沖縄・那覇市にて)