天国と地獄
 

2024年3月4日更新

第237回 この国のかたち<その2>

今回は前々回のコラムの続きとして、「この国のかたち」について述べて行きたいと思います。

私は、日本という国は根本から変わらなければならない時期に来ていると痛切に感じています。
明治維新や敗戦の時と同じく、この国は政治体制や社会など、様々な点で行き詰まりつつあり、
それを根本から変えないと次の時代を迎えることはできないのです。

先日、日本を代表するあるシンクタンクのトップの方とお会いする機会がありました。
私が財政に対する危機感について話すと、その方は「浅井さん、もうすぐ日本は財政破綻しますよ。
ハイパーインフレがやってきますよ」とおっしゃいました。
そして「この国は、根本から大改革しなければダメだ」とも断言していました。
その方は、いろいろな人にこのことについて話したそうなのですが、
「はっきり言って、日本人の誰一人、本当に日本を根本から変えようと思っている人はいない」
と残念そうに話していました。

私は、いま日本は相当まずい状態に陥っていると思っています。
ただ、逆にもうすぐ日本を変えるチャンスがやって来るとも見ています。
どういうことかと言うと、ご存じの通り現在、日本の借金は世界第2位
(ちょっと前までは1位だったのですが、レバノンが1位になり、日本は2位となりました)です。
2022年のIMF発表の数字によると、GDPに対する債務(借金)の比率は
日本は世界のトップレベルなのです。
国民のおよそ半数が食糧危機に陥っているベネズエラや、
内戦が続くアフリカのスーダンをはるかに超える巨額の借金を抱えていますし、
国債がデフォルトし厳しい財政再建を余儀なくされた、
ギリシャやアルゼンチンよりもはるかにひどい財政状態なのです。

普通、トップクラスになるのは良いことですが、この場合は最悪ですね。
なのに、政治家も財政の膨張を止める気がありません。
特に、岸田総理はそういう気持ちが全くありませんから、
いずれ財政が破綻することは間違いないのです。
ただ、逆に言うと財政破綻すればもう財政改革をせざるを得なくなるわけで、
私はそのときに日本を根本から変えるチャンスがやって来ると思っています。

そしてそれが2025~35年頃に来るのでは、という風に見ています。
しかし、将来の日本をどうすべきかという指針がどこにもなく、誰も示していません。
そこで、私なりの考えを皆さんにご説明したいと思います。

① 教育:
今、日本の国民はバラマキを求めるばかりで本当につらい改革をやろうという気持ちがありません。
ですから、まずは国民の考え方を変えなければなりません。
教育を中心に、国民のレベル(民度)を上げて行くことが私は一番大事だと思います。

② イノベーション:
次に、日本はこの30年間経済が停滞してきたわけですが、
逆にアメリカがこの30年間でこれほど伸びたのは、
ITを中心とした「iPhone」や「Amazon」のような新しい道具やものごとの考え方、やり方など、
イノベーション(革新的な技術力あるいは革新的な新しい次の方法)が出てきたからです。
日本には、こういったことを考える力が国家にも、そして国民にもなくなってしまっています。
そこで、次の時代を切り拓くためのイノベーション力を国家全体としてつける方策を
考えるべきだと思っています。

③ 財政規律:
同時に、財政運営も全面的な改革が必要です。
現在の日本政府は借金をひたすら膨張させ続け、いろんなものを誤魔化してきたわけですが、
そういう体質ややり方を一新し、財政破綻を回避するための策を徹底的に講ずるべきだと思います。

④ 統治機構:
幕末から明治維新にかけて、日本は欧米列強に対抗するため中央集権体制に舵を切りましたが、
現在ではそれによる弊害の方が多くなっています。
あらゆるものが東京一極集中となっており、
行政の意思決定も「霞が関」から全てが地方に押し付けられています。
それらを改めるには、本格的な道州制への移行が必要なのです。
さらに、地方分権を遥かに超えて、各地方州が独立国家を作り上げて行くのです。
私はこれを絶対実現すべきだと思っています。
たとえばアメリカなどは元々あれだけ大きな国ですし、州ごとに税金も違うわけです。
デラウェア州などはオフショアに近く税金がほとんどありません。
ですから、アメリカの上場企業の多くがデラウェア州に籍を置いているのです。
また、これはちょっと信じがたい話しですが、
アメリカのいくつかの州では、なんと所得税もないのです。
そうやって自分たちの州の魅力をアピールし、そこに国民を呼び集め、競争しているのです。
スイスもそうです。地方ごとに税率や税制が違うのです。
そのくらい強力な権限を与えた州の連合体
「ユナイテッド・ステーツ・オブ・ジャパン(U・S・O・J)」を作り、
州ごとに独自の税制、教育、法律を作り、競争させるのです。
競争原理こそが、いまの日本には一番重要だと思います。

⑤ 政治原理:
世界のどこにもない「まったく新しい独自の民主主義体制」を考えるべきです。
これはぜひ皆さんからもアイデアを頂ければと思っております。
もちろん、元首は天皇のままでいいと思いますが、たとえば首相は国民の直接選挙で選出し、
衆議院選挙とは関係なしに任期4年で強力な権限を与えて改革を進めさせるのです。
アメリカの大統領制にも近い形ですが、国民の政治への関心を高める有効な方法となりえます。
そのために私は憲法をゼロから作り直すくらいのことをやらなければダメだと思っています。
現行の、なかばアメリカから貰ったような憲法ではなく、
日本独自の憲法を自分たちで作るということが必要だと思っています。

⑥ 税制:
今、日本からはお金持ちや高度な人材が海外へどんどん逃げて行っているわけですが、
これは円安が来ればさらに加速します。
これを食い止めるには、日本の税制を根本から変えなければダメです。
最高税率が国税と地方税を合わせて55%という所得税は高すぎます。
これ以外にも社会保障費その他が徴収されるわけで、
本当に稼いでいる人間は65%(所得の3分の2)を持って行かれるのです。
江戸時代には「六公四民」などと言ってお上が稼ぎの6割を召し上げたという話もありますが、
現代にこんな事をやれば金持ちや優秀な人間が海外に出て行くのは当たり前で、
こんな税制を放置しているのはハッキリ言って異常、あり得ないことだと思います。
所得税の上限はせいぜい40%にして、逆にいま税金を払っていない人からは
たとえば最低でも10%程度は税金を払ってもらうようにします。
法人税についても、たとえば消費税の益税も問題ですので、抜本的に見直しを行ないます。
国民からも企業からも、広く税金を払ってもらうことで、税制に対する国民の意識を高め、
みんなで社会を支えるというシステムが必要だと思っています。

⑦ 有事体制:
日本は天災や地政学リスクといった危機が多い国にもかかわらず、危機管理が非常に下手です。
これからは危機管理に関する教育を国家ぐるみで行ない、
危機管理庁みたいな専門の機関を作って、
有事(戦争やパンデミック、大災害)に対して備える国民教育も行なって行くことが重要です。
今は北朝鮮が毎月のようにミサイルを撃ち放ち、日本の近くにも落ちています。
そんな北朝鮮をはじめ、ロシア、中国という核保有国が3つも日本の目の前にいるわけです。
こんな危ない国はない、と世界中から言われているにも関わらず、
日本国民は能天気で自分たちで国を守ろうという気概がありません。
私は自衛隊を根本から改革し、「戦える自衛隊」を目指すべきだと思っています。

その他、移民政策も根本から変えるべきでしょう。
このままいけば高齢化は待ったなしです。
私たちが将来年をとった時、面倒を見てくれる人材がいないのです。
きちんとした受け入れの仕組みを作ったうえで、良い人材は積極的に受け入れることが重要です。

また、政府の行動を厳しく監視する「オンブズマン制度」の設置も重要です。
これはイギリスで結構進んでいる制度ですが、
形だけの監視ではなく実のある制度改革を継続的に行なうのです。
こうした仕組みの導入に向けて、海外の様々な事例を積極的に研究することが重要です。

明治維新の時には、岩倉使節団が明治4~6年に派遣され、
国家の中枢メンバーの大半が欧米に視察に出されたのですが、
それに匹敵するくらいのことをやるべきだと私は思います。
日本はすでに世界のお手本ではなくなっています。
シンガポールでは、かつては「日本を見習え」「日本を目指せ」と言われていましたが、
現在では(日本を指して)「国家として、あのようになってはいけない」
とすら言われているそうです。

私は、教育はフィンランドとオランダ、地方自治はスイスとアメリカ、
税制と官僚制はシンガポール、防衛はスイスを参考にすべきだと思っています。
徹底して海外の進んだ国々のやり方を研究し、それを日本に合わせる形で取り入れ、
根本から日本を変えることが必要だと思っています。

 

総入れ替えをするためには、一度“ガラガラポン”を受け入れ、ゼロから立て直すしかない。
その時、“どうするべきか”という指針が何よりも重要になる。
   (2024年1月 ニュージーランドへ出発前の成田空港ラウンジにて)