天国と地獄
 

2018年8月20日更新

第66回 ブレグジットに揺れるイギリス

 

イギリスは「ブレグジット」、つまりEUを離脱するということで2年ほど前から大騒ぎになっています。
その結果、イギリスの景気は良くないと言われていますが実際はどうなのか、話を聞いてみました。

ロンドンに私が行きつけにしているマッサージ店があるのですが、
そこの先生が日本人なので話を聞いたところ、
「以前と比べて景気が悪いという感じはしない。
不動産の価格はもちろんもう止まっているけれども、下がりもしない。
街を見てもどんどん新しい建物が造られていて、景気は良いと思う」と言っていました。
また、高級ワインショップの店長さんに話を聞くと、
「原油価格が下がっても中東からのお客は減っていない。
中国からのお客も増えている。ロシア、中国のお客が目立って増えている」と言っていました。
「ブレグジット」のイギリスにおける影響は、
今のところゼロとは言わないけれどもそれほど大きくもないというところかと思います。

今、1ポンドは約150円弱ですが、物価はすごく高いと感じます。
東京と比較しても1.5倍から2倍、不動産は約2倍でしょうか。
ロンドンでちょっと食事をすれば、やはり東京の1.5倍から2倍はかかってしまいます。
そして一番驚いたのはロンドンの地下鉄です。
地下鉄のことをアメリカでは「subway」といいますが、
イギリスでは「underground」俗称「tube」と呼びます。
イギリスの地下鉄は、戦時中ドイツ軍の空爆を受けた時に
「防空壕」として大変役に立ったと言われています。

今回、ロンドンを東西に走っている地下鉄「セントラルライン」に乗ったのですが、
駅は古いし車両はものすごく狭いしでびっくりしました。
そして切符自体は、分厚い上に日本の4~5倍位の大きさがあります。
しかも運賃が高く、乗車区間6駅位で4.9ポンド、
1ポンド150円換算で日本円で735円もするのです。
東京のメトロは6区間位は最低料金の160円で乗れますから、
その4倍強もかかるということです。
私は最初信じられなくて、冗談かと思いました。
このようにロンドンは、バスや地下鉄などの料金がとても高くて
物価的には住みづらい街かなと思いました。

繁華街に行くと、イギリス人よりも中国人、アラブ人、ロシア人の方が多いくらいで、
ホテルで働いている人のほとんどはスペイン、ギリシャ、東欧系などの人たちです。
イギリス人がウェイターなどの接客業で働いていることは、まずありません。
このように、外国から移住して来る人や働きに来る人がとても多いのです。
ロンドンは、ニューヨークと肩を並べるくらいの多国籍な都市です。
東京も最近は外国の人が増えましたが、比べものにならないですね。

そして、今回もいろいろな人に出会いましたが、
私たち東洋人に対しても皆さんとても親切でした。
特にイギリスの田舎の方では、豊かな老後の生活を送っている高齢者が多いせいかもしれませんが、
どこへ行っても「Good Morning」と手を挙げて笑顔で挨拶をしてくれました。
親切で人間味のある国民だな、と感じながら心地良く過ごすことができました。
現地のある日本人に聞いてみると、
「確かに物価は高いけど、もう日本に戻ろうとは思わない」とおっしゃっていました。
「どうしてですか?」と尋ねたところ、
「日本という国はしがらみが多くて、人間関係がおっくうだ。ここは自由だから」
というような返事が返ってきました。

というわけで、ロンドンは新しいビルもどんどん建設されていますし、
景気も思ったほど悪くないという状況でした。
ただ、ウクライナ、リトアニア、スウェーデンといった国では、
ロシアの脅威で「徴兵制」が復活しています。
イギリスは島国でヨーロッパ大陸と離れているため、
逆に一番安全な国と言えるかもしれません。
今後、ヨーロッパがどうなって行くのか、さらに注目して行きたいと思います。

ロンドンは一見、とても活況だった。
はたして「ブレグジット」は吉と出るのか。
今後の動きに注目したい。  

(イギリス、シティのイングランド銀行
   (イギリスの中央銀行)前にて  2018年6月)