天国と地獄
 

2020年12月25日更新

第151回 2020年末、2021年年頭に向けて<前編>

 

皆さん、今年もいよいよあとわずかとなりました。
2020年ももうすぐ終わりますが、コロナ一色のすさまじい年でした。
ちょうど1年前のクリスマス、そしてお正月は平穏でした。
私たちがコロナの話をニュースで聞いたのは、確か年末か1月に入ってからで、
それもちらっと「中国で新しいウイルスが流行っている」程度の話でした。
「どうせ、海の向こうの出来事だろう」と誰も気に留めていませんでした。
それが、ここまできてしまいました。

今からおよそ90年前の1929年に起きた大恐慌は、
「グレート・ディプレッション(Great Depression)」と呼ばれていました。
今回は、全世界で国境が閉鎖されたことから
「グレート・ロックダウン(Great Lockdown)=大きな不況」と呼ばれ、
経済的には一時的ですが1929年の世界大恐慌時と同じくらいの被害、損傷が与えられました。

そしてもうひとつ、今からおよそ100年前、1918年の第一次世界大戦の最中、
スペイン風邪が流行りました(スペインという名前がついていますが、
恐らくアメリカ発だろうと言われています)。
風邪という名前がついていますが、人体に及ぼす影響はコロナの30倍位ひどい疫病です。
あの当時の世界の人口は20億人弱で、亡くなった人の数は最低でも4000万人と言われています。
ただ、実際にはどれだけの人数が亡くなったのかは不明です。
というのも、それは第1次世界大戦中に戦場で蔓延し、多くの兵隊たちが死んだのですが、
それが敵国に知られてしまうと、自分たちの軍の弱さが分かってしまうため、
その情報が最高機密とされたためです。
ですから、亡くなった人の数は諸説あり、最大1億人という話もある程です。
さすがにそこまでは大げさかもしれませんが、
5000~7000万くらいの死者が出たのではないでしょうか。大惨事でした。
そして、そのおよそ100年後の今回、コロナがやってきている状況です。

私の見立てでは、コロナが収束し本当に経済が元に戻るまでには、あと2年位かかると見ています。
「Go Toトラベル」キャンペーンなどのおかげで、
高級旅館などは本当に予約でいっぱいだという話を聞いています(12月10日時点)。
先日、熱海の旅館を利用しました。
そこの支配人とは顔見知りで本当のことを教えてくれたのですが、
このコロナの影響で旅館を維持するためにやむを得ず
スタッフの3分の2の方々に辞めてもらったそうです。
そして3分の1の人数でやっていこうとした矢先、
「Go To トラベル」キャンペーンが始まったそうでその影響で予約が急増し、
今は働いても働いても仕事が終わらないというパニック状態だそうです。
ただ、「Go To トラベル」キャンペーンが終わってしまうとまた元に戻ってしまいそうで、
旅行業界はまだ厳しい状態が続くのではないかと思われます。

では、2021年を迎えるにあたり経済は一体どうなるのでしょうか?
私は、そこそこ回復はするものの業種によってはまだまだ厳しい状況が続くと見ています。
本当に回復するのは、2022年か2023年ぐらいでしょう。
ただし、これだけ世界中でバラ撒きをしましたので、
日本国だけでなく世界中の政府の弱いところから順次破綻していく可能性があります。
あるいは、破綻する前に通貨の価値が非常に下落する、
つまり世界的に巨大インフレの時代がやってくるのです。

このような状況の中で新年を迎えるにあたり、今回皆さんにぜひ見て欲しい映画をご紹介します。
2019年に日本でも上映された、『国家が破産する日』という韓国の映画です。
これは、1997年に韓国で起こった通貨危機の裏側を描いた社会派ドラマで、
私が前から言ってきたとおりの国家破産の内容なのです。
1997年タイから始まった通貨暴落は、マレーシア、インドネシア、韓国に飛び火し、
アジア全体に深刻な広がりを見せ、大騒ぎになりました。
韓国は外貨準備高がほとんどなくなってしまい、また海外からの借金が多かったため
韓国経済全体が破綻し、そして政府も破綻寸前まで行ってしまうのですが、
それを再現した映画なのです。

恐らく、経済がそんなに詳しくない人でも、
「国家が破産する」ということがよくわからない人でも、
この映画を1本見れば十分理解できると思います。
当時の映像も入っていますし、実際に起こったことを脚色しながら
韓国ドラマ風に面白く仕上げてあるのです。
極端に善玉と悪玉が出てきて、その中で全財産を失う人、
逆にこれをチャンスにしてのし上がっていく中年の金融マン、
IMFが介入し、とんでもない要求を突き付けてきたことで
真っ青になった韓国の政府関係者と、いろいろな人や話が組み合わさって良くできた映画です。

その中で、金利の話も出てきます。
経済評論家の中には、「国が破産するとインフレが来るのだから、
借金して不動産を買えば良い」という人がいますが、そういう単純な問題ではありません。
たとえば韓国では、IMFが介入した際に金利を一気に引き上げました。
当時12.5%だったの金利を、30%にまで上げたのです。
これはどのくらいの衝撃かと言うと、
たとえばマンションを買う時に3000万円のローンを組んでいた人は、
それに対して毎年30数%の金利がかかるわけですから、
毎年1000万円返せと迫られることになるわけです。
元々お金がないから借金をしているわけで、そんなことは無理です。
ですから、慌ててマンションを手放す人がほとんどだったそうです。
特にソウルのマンション相場の値崩れは酷く、価格は7割下がりました。
そういう話が実際にあったのです。
ですから、単純に国が破産しそうだ、ハイパーインフレが来そうだということで
インフレ対策として借金して不動産を買え、というのは非常に乱暴な議論で私には信じられません。

この映画はそういった全て実際に起きたことを元に話を進めていますので、
ぜひ、ご覧になることをお勧めします。
DVDが4000円前後で発売されています
(amazonのプライム会員ならもっと安く視聴することもできるようです)。

今年は誰もが想像だにしなかった1年となりました。
皆様には私のコラムをお読みいただき、
心から感謝しております。
皆様が健康で、世の中が早く明るい日常を
取り戻せるようになることをお祈りしております。

(2020年12月 東京・御茶ノ水にて)