| 新型コロナウイルスの感染が、日々急速に広まっています。世界中で亡くなる方がどんどん増えています。
 各国は、感染を防ぐために人々の外出を禁止して都市を封鎖し、
 “戦争”という言葉までを使って対策を講じています。
 
 経済への影響も、すでに大きくなってきています。
 通常、ウイルスや天災というものは、
 たとえば巨大隕石が衝突して地球が壊滅するような事態は別ですが、
 経済に対する影響は短期的なもので収まるものです。
 2003年に流行したSARS(サーズ)のときもそうでした。
 しかし、今回は様子が違います。
 新型コロナウイルスによって、世界経済の構造問題があぶり出されそうなのです。
 それは、世界中で積もりに積もった債務残高です。
 特に、中国の債務問題には注意が必要ではないでしょうか。
 
 昨年の秋くらいから、中国の地方銀行で取り付け騒ぎが相次いで発生しました。
 中国政府はそれらの情報を即座に統制し、ネット上から削除し、噂を流した人間を拘束しました。
 
 近年、中国経済には「灰色のサイ」なるものが徘徊していると言われ続けてきました。
 きっかけは、2018年11月に中国人民銀行(中央銀行)が発表した「2018年金融報告」にあります。
 そこに「来年(2019年)にも『灰色のサイ』に関連した金融リスクが
 表面化する可能性がある」と記されていました。
 灰色のサイとは「存在は明白だが、見過ごされている問題」を指し、
 中国の具体的な問題とは、「債務」を指します。
 
 ところが、米中貿易問題が表面化したにも関わらず、
 2019年に灰色のサイは出現しませんでした。
 しかし、今度のウイルス危機によって灰色のサイが出現する可能性が、
 かつてなく高まっていると考えられます。
 
 中国の公式統計では、同国の商業銀行における不良債権比率は2019年9月末時点で
 わずか1.9%に過ぎません。日本のピーク時の不良債権比率8.4%を、大幅に下回っています。
 この統計を信じると「中国は、バブル崩壊という日本の轍を踏まない」ということになりますが、
 極めて怪しいと思います。潜在的な不良債権比率は5~10%の間と言われています。
 絶対額は日本のバブル時(100兆円)や米サブプライム・バブル(300兆円)を優に上回るはずです。
 今回の騒動で、中国経済はかつてない打撃を受けており、
 もはや灰色のサイが出現するのは時間の問題ではないでしょうか。
 中国はかなり厳しい状況に追い込まれるでしょう。
 私は、中国発の世界大恐慌を視野に入れた方がよいと思っています。
 
 皆さんもご存知の通り、1929年から始まった大恐慌はアメリカ発でした。
 その前の10年、すなわち1920年代のアメリカはどうだったかというと、
 当時の人たちは「永遠の繁栄」と表現していました。
 後から振り返ると、これは完全なる勘違いなのですが、
 日本のあのバブル(80年代後半)も一緒ですね。
 株は上がるわ、不動産は上がるわで、あらゆる資産の値段が上がったので、
 「借金してでも株を買わないやつは馬鹿だ!」という風潮が生まれたわけです。
 それが1929年10月にNYダウが暴落したことを期に、バブルは完全に崩壊しました。株価は1932年に大底を打ちますが、その翌年、全ての銀行が閉鎖されています(バンクホリデー)。
 つまり、世界で一番伸びていた国(当時はアメリカ。今は中国です)の心臓部分が止まったのです。
 
 ルーズベルト大統領というのは不思議な運命を持っているようで、
 彼が大統領になって初めての仕事が、全銀行閉鎖だったのです。
 銀行の閉鎖中、経営状態が良くない銀行は整理されました。
 つまり、そこに預金していた人は預金がカットされてしまったのです。
 結局、半分の銀行は救われて、半分の銀行は潰されました。
 そこまでしても、米国経済は1939年頃まで浮上できませんでした。
 「ニューディール」という社会主義的な政策をやっても立ち行かなかったのです。
 
 米国経済がようやく浮上した1939年に何があったかというと、
 ヨーロッパで第二次大戦が始まったのです。
 戦争時はインフレになることがほとんどですから、それでやっとデフレが収束しました。
 それでも米国の株価が1929年の最高値を取り返したのは、私が生まれた1954年のことです。
 25年経って、やっと最高値を取り返せたのです。それくらい時間がかかったのです。
 
 私は来年からの10年間、中国経済はのたうち回り、地獄を見るのではないかと思っています。
 ただし、そこで中国が真に終わりということではありません。
 それを乗り越えて、中国は初めて世界一の覇権大国になって行くのではないでしょうか。
 その過程で、民主化されることを願っています。
 
 他方、ゆっくりとですがアメリカの衰退は必然でしょう。
 しかし、衰退するからといって米ドルが趨勢的に弱含むとは限りません。
 20世紀前半、覇権が大英帝国からアメリカに移った時、イギリスのポンドは強含みました。
 私は、今回も衰退国の“ドル”が強含むと見ています。
 
 ドルについては、崩壊論などが取りざたされることがしょっちゅうですが、
 本当にダメになるのは20~30年後でしょう。
 ですから、若い人には関係してくるかもしれませんが、
 私みたいに65歳とか、50代以上の人はドルの行く末を心配する必要はありません。
 どうしても心配な方は、金(ゴールド)に換えておけばよいでしょう。
 
 新型コロナウイルスによって、覇権の移行に伴う新興国(中国)のバブル崩壊が現実味を帯び、
 いよいよその本番がこれから来ると考えてよいでしょう。
 当然、そうなれば日本も大恐慌になります。
 
 これを生き抜くためには、
 私が書いた『2020年の衝撃』『新型肺炎発世界大不況』(共に第二海援隊刊)が必読です。
 この2冊を読みながら、生き残りを図っていただきたいと思います。
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