天国と地獄
 

2018年7月25日更新

第64回 北海道の町おこし

 

北海道での初日は札幌で講演会、
翌日は小樽に泊まって、
3日目は鹿部町に行って来ました。
鹿部町は函館の少し北で、
有名な大沼国定公園が近くにあります。
大沼は、駒ヶ岳が火山噴火し
その時せき止められてできた綺麗な沼で、
ジュンサイなどが採れることでも知られています。
そして駒ケ岳の東側のすそ野、
海岸の手前のところに鹿部町があります。

そこに、去年の当コラムでもご紹介しました
第二海援隊で開催している
ニュージーランドツアーに来て下さる
髙田さんという方が住んでいます。
髙田さんは私の大ファンで、
札幌の講演会にも来てくれます。
ですから、私も北海道に行った際は
鹿部町を訪ねるようにしています。
髙田さんは鹿部町長の
盛田昌彦さんを支援しているということで、
今回お会いしていろいろな話をして来ました。

 

 

大沼国定公園の美しい自然の中で、
髙田さんご一家と。

盛田さんは現在46歳、鹿部町長になられて1年目です。
町の副町長から始まる組織の中で上層部の人たちのほとんどが彼よりも年上で、
しかも先輩であるということからなかなか思うようには行かないことが多いのだそうです。
それでも彼は、町が良くなるように改革をして行きたいとおっしゃっていました。

鹿部町の主な産業は漁業です。
一部、温泉やゴルフ場といった観光産業もあるそうですが、
鹿部町は全国的にはそれほど知られた町ではないので大きな産業にはならず、
基本は漁業だそうです。
しかし、これまでは海産物が大変豊富だったそうなのですが、
最近はイカがほとんど捕れなくなってしまったそうです。

イカだけではなく、将来的には様々な海産物が捕れなくなる恐れがあると
世界中で言われています。
それは、海洋資源を捕りつくしている現状があるからです。
日本は漁獲制限を設けていますが、
中国や韓国は特に制限など設けずお構いなしにどんどん海産物を捕っています。
この状態が続けば、近い将来、海の資源は枯渇してしまうのではないかと言われています。
その兆候として、鹿部町のイカも捕れなくなって来ているわけです。

ですから私は、何か新しい産業を生み出したら良いのではないかと町長に提案しました。
その中で話題になったのは、
私が10年程前に作った「昆虫工場」という会社です。
将来、世界的な食料危機が起きた時、
昆虫を食べるという「昆虫食」がその救い手となるのではないかと考えたのです。
そこで、昆虫食を研究したり、昆虫を養殖してそれを産業とする会社を作ったのですが、
なかなか難しいものがありました。
人に話しても、理解されないどころかバカにされることさえあり、
今でも昆虫食と聞いて思い浮かぶのは、
せいぜい信州長野の「いなごの佃煮」や「蜂の子」くらいではないでしょうか。
また、本気でやるとなったら相当な額の資本と人材が必要となります。
私は当時も忙しくしていたので、自分で社長をすることは無理でした。
社長を任せられる人、命をかけて取り組んでくれる人がいないと無理だと判断して、
それ以来一時休業という形の休眠会社にしています。

ただし、私は今でもあきらめていません。
というのも、今では世界中で昆虫に関する産業が出てきており、
フィンランドなどでは「こおろぎパン」というパンを売っているくらいなのです。
栄養価の高いこおろぎを養殖し、
そのままではグロテスクで食べられない人もいるので粉末にし、
それをパン生地に混ぜて焼き上げ「こおろぎパン」として販売しているのです。
世界的なニュースにもなっています。
日本は、伝統的にも昆虫食を取り入れてきた国なのに、すでに遅れています。

新しい産業の案の1つとして鹿部町の盛田町長に話したところ、
彼は熱心にメモを取りながら話を聞いてくれました。
将来の日本の産業という点から考えても、
昆虫の養殖および昆虫食の産業というのは可能性を含んでいると思っています。
皆さんの中で関心のある方がいらしたら、ぜひ研究などされたら良いと思います。

北海道は、豊かな大地があっておいしい食べ物もたくさんあるのですが、
昔盛んだった石炭などの産業も廃れてしまい、
札幌以外はあまり勢いがありません。
私は、北海道の再生は重要課題だと思っています。

鹿部町盛田町長(右)と
髙田さん(中央)と一緒に
名店「大寿し」(鹿部町)で。

おいしい寿司を食べながら、
未来の昆虫食で盛り上がりました。

 

(北海道・鹿部町にて 2018年6月)