天国と地獄
 

2018年4月5日更新

第53回 イエス・キリストは史上最大のビジネスマンだった!?(上)

 

実は、私は昔から「イエス・キリスト」に大変興味があります。
それは、学生時代に早稲田大学の政治経済学部・政治学科で
政治思想を学んだことがきっかけになっています。
ギリシャ・ローマ、そして近代に至るまでの政治思想の流れ、
さらに近代科学のほとんどが西洋から来ていますが、
西洋の考え方の根本には必ずキリスト教の存在があるのです。
ですから、必然的に人間としてのイエス・キリストを学ぶことになるのです。

私はその時、キリストという人物に大変興味を持つと同時に、
日本の二大宗教である「神道」と「仏教」についても思いを巡らせました。
お坊さんや仏教の信者の方には申し訳ないのですが、
私は8割くらいのお坊さんは“職業”としてのお坊さんで、
その上、そのうちの1割、2割の人は堕落していると感じています。
もちろん、暗黒の中世においてはキリスト教も堕落していましたし、
現代のバチカンに関してもいろいろな意見があります。
それはおいておくとして、キリスト教では慈善事業がとても盛んに行なわれており、
見習うべき点もたくさんあります。

イエス・キリストに興味を持った理由は、
前述のように私の学生時代の経験があるのですが、
それ以降、常に関心を持ち続けています。
イエス・キリストは、西暦0年に誕生したと言われていますが、
実際はマイナス4年だという説もあります。
彼は、ローマ帝国が支配していた今のイスラエル近辺に暮らすユダヤ教徒でした。
彼自身が本当にキリスト教を創ろうと思ったかどうか、それはわかりません。
もし、彼が生まれ変わって現代に生きているとしたら……
自分が言ったことがこんなにも大きな宗教になって残っていること、
そしてそれがキリスト教として世界の半分を牛耳っているということに
大変驚くのではないでしょうか。

彼は、当時の形骸化し堕落したユダヤ教に反抗したため、
ユダヤ教内の高い位に着いていた人たちから恨まれていました。
そして、当時支配していたローマの代官ピラトスにそのことを密告され、
最後には十字架に磔(はりつけ)にされて殺されてしまうのです。
しかしその後、彼の教えを受け継いだ弟子たちがローマ帝国で布教活動をして行きます。

当初、キリスト教はローマ帝国では「邪教」とされていました。
そのため、信者たちは見つかると捕らえられて
「コロッセオ」という円形闘技場に猛獣と共に放たれ、
大観衆が見ている中で食べられてしまっていたのです。
「あいつらはとんでもない邪教の信者なのだから、猛獣に食われて当り前だ」と、
皆で拍手喝采してその様子を楽しんだという、残酷な時代でした。
キリストの弟子たちはそんな酷い仕打ちを受けたにもかかわらず、
さらに布教活動に励みました。
その結果、キリスト教はローマ帝国が紀元4世紀頃に滅ぶ直前には、
なんとローマ帝国の国教となるのです。

ローマ帝国が滅んだ後、「暗黒の中世」と言われた時代に突入します。
キリスト教はヨーロッパ各国に浸透して行き、
西はポルトガル、東はギリシャからロシアまで広まって行きました。
しかも、スペイン・ポルトガルは南米を、
イギリス・フランスが北米に攻め入って支配しましたから、
南北アメリカでもキリスト教が広く伝わりました。
そして今では、韓国にも日本にもキリスト教徒がいます。
全世界の約半分の国を占めている、と言われるほど広大な地域に広まり、
人類の半数近くがキリスト教徒であると言われる時代になりました。

このことを通して、私が何をお伝えしたいかと言いますと、
イエス・キリストも彼の弟子たちもとてつもない広報・布教活動を行なったということです。
単なる宗教の話と捉えてしまうと狭い話になってしまいますが、
“人類活動の根本”と捉えて考えて欲しいのです。

人という字は、2本の棒が支え合ってできている、つまり人間というのは支え合って生きており、
狼や犬と一緒で単独では生きていけません。
必ず2人以上の人間がいて、たくさんの人間が集まればそれが村になり、
組織になり、その大きなものが国家、あるいは国連となって“人類”になっていくのです。
複数の人間がコミュニケーションを取って、文明社会を築き上げて生きていくのです。
その意味で、宗教活動も含めてコミュニケーションが重要であることは明らかです。
人を説得し、何か大きな仕事をしていくことは、ビジネスでも大切です。
皆さんが生きていく上で人と触れ合い、友人や親友を作って親交を深めて行けるのも、
コミュニケーション能力あってのことです。
自分と反対意見を持っている人ともコミュニケーションを図り、
理解し合うことで親友になる場合もあります。

イエス・キリストたちがやったことは、人類活動の根本的なことなのです。
正しいと思うことを、人間(じんかん)に広めて行ったのです。
ビジネスも同様で、良いと思う商品を売っていくことが大切です。
私はそういった、いわゆる“稀代のセールスマン”であったという面からも、
イエス・キリストたちが行なったことに大変興味があるのです。
次回も、キリストとビジネスの関連性についての話をしたいと思います。






 

キリスト教に興味のある私は、
海外に行くとよくその土地の教会を訪れます
(写真は2017年に訪れたポーランドの教会)。
大きい教会、小さな教会、
様々に趣きは違いますが、
神に対して祈る姿には
等しく通じるものがあります。

(ニュージーランドにて  2018年2月)